アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

赤ちゃんイメージ皮膚の表層には約0.02㎜という薄い角層があり、これらを覆うセラミド、皮脂、水分などから成るバリア機能により皮膚は守られています。角層のバリア機能が低下して、乾燥、痒み、湿疹を繰り返し起こす皮膚疾患がアトピー性皮膚炎です。
皮膚のバリア機能が低下すると、汗、細菌などの病原体、食物、ハウスダストなどのアレルゲンや刺激が皮膚内部に侵入して炎症反応を起こします。強い痒みにより掻き壊すことで更にバリアが破壊され悪化します。
アトピー体質(本人や家族がアレルギー性疾患を持っている、またはIgE抗体という免疫物質を作りやすい体質)の場合には発症しやすいとされています。角層のバリア機能に深く関与するフィラグリンの遺伝子変異も発見されています。
乳幼児期、小児期、思春期・成人期にそれぞれ発症が見られ、成長と共に症状が軽減し、良好な状態で落ち着く寛解に至ることもあります。ただし、寛解して何年も過ぎてから再発することもあります。外的刺激意外にもストレス、睡眠不足、月経などによっても悪化する事があります。
アトピー性皮膚炎と似た他の疾患もあるため専門医での診断治療をおすすめします。

病因

皮膚はバリア機能によって外部からの異物侵入を防ぎ、水分を保持しています。皮膚のバリア機能が低下して皮膚が乾燥すると、アレルギーの原因物質や刺激物質が皮膚の中に侵入しやすくなり、それによって慢性的な皮膚炎を生じているのがアトピー性皮膚炎です。遺伝子変異によってフィラグリンが減少し、皮膚のバリア機能が低下して発症することがありますが、遺伝子変異があっても正しいスキンケアや早期治療で発症しにくくなると考えられています。

症状

乳幼児期(生後2か月~4歳)

頬をはじめ顔に湿疹ができて、それが頭や首、胸に広がっていきます。空気が乾燥する冬にはブツブツした鳥肌状になることもあります。また、頭部に分厚いかさぶたができることも珍しくありません。
この時期は乳児湿疹や脂漏性皮膚炎も多いためこの時点でアトピー性皮膚炎と診断される事は稀で治療も湿疹に準じます。

小児期(~12歳)

乾燥しやすい体幹の皮膚にも症状を起こしやすく、肘や膝の内側やおしりなどの皮膚が分厚くなり、ゴワゴワとざらつく感触になることもあります。皮膚の乾燥、赤みのある腫れ、掻いた痕が線状に残る、小さく赤いブツブツなどの症状を起こします。顔色が白っぽくなる、ウロコ状のフケなどの症状が現れることがあります。10歳くらいになると自然に寛解へ向かうこともあります。乳幼児期から引き続き発症することもありますが、いったん寛解してから再度発症するケースや、小児期にはじめて発症するケースもあります。

思春期・成人期(12歳以降)

主に首の前や横、胸、手首、肘や膝の内側などに炎症を起こし、皮膚がゴワゴワとざらつく感触になる、色素沈着するなどの症状を起こします。繰り返し掻き壊してしまうと悪化し、学習、学校生活に支障が出ることもあります。

合併症

感染症

湿疹に黄色ブドウ球菌などの感染が起きた場合、伝染性膿痂疹(とびひ)を合併してジクジクした湿疹が広がってしまうことがあります。また、単純ヘルペスウイルスが増殖してしまうと痛みを伴う水疱が多数でき、広がって、リンパ節の腫れ、発熱などを起こすこともあります。子どもは、伝染性軟属腫(水いぼ)の多発を合併することもあります。

眼疾患

アレルギー性結膜炎を合併し、角膜炎を起こす事があります。また、目の周囲にかゆみがあって繰り返し掻いたり圧迫したりすると、白内障や網膜剥離など深刻な視力障害につながることもあります。

脱毛

炎症を繰り返している部分が薄毛になるといった症状を起こすことがあり、円形脱毛症を伴うこともあります。

治療

治療アレルギーがはっきりしている場合には、接触をできるだけ避けてください。アレルゲンが複数あるケースも珍しくないため、悪化する要因として疑われるものがありましたらご相談ください。自己判断による食事制限はおすすめしません。尚、アトピー性皮膚炎の悪化原因は多岐に渡るため、食生活、生活環境、症状が悪化するきっかけなどを詳しくうかがい、必要に応じて検査を行いながら治療を進めていきます。
かゆみが強く、掻き壊してしまうと合併症を起こして悪化するリスクが高くなってしまいます。体質、症状により合った治療は異なります。その都度必要なアドバイスをさせていただきます。
治療の進歩でアトピーは不治の病ではなくなりました。必ず良くなりますので希望を持って下さい。今後もさらに新しい治療法の登場が期待されます。
不安なこと、わからないことがありましたらご遠慮なく聞いてください。

塗り薬

症状に応じステロイド、タクロリムス(プロトピック)、デルゴシチニブ(コレクチム)、古典的外用剤などを部位や症状に合わせて処方しています。
当院では塗りやすく、続けやすいよう調剤も工夫しています。治療薬の塗り方、保湿などのスキンケアも重要なので、詳しくお伝えしています。

ステロイドは安全で効果的な使い方が確立されているので指示通りに使えば問題はありませんし、使い続けなければならないものでもありません。

内服薬

症状に応じ抗アレルギー薬の処方を行います。
痒みのみでなく炎症も抑えます。多数の種類から体質、症状、ライフスタイルに合ったご提案をさせて頂きます。
体質改善の漢方薬や難治の方にはJAK阻害薬などの治療も承っております。

光線治療

治療効果のある波長の紫外線(ナローバンドUVB)を照射する治療法で、一般的には他の治療法と組み合わせて行います。当院では光線治療を行っていませんので、ご希望される方には連携している医療機関をご紹介して受けていただいています。

注射薬

炎症物質サイトカインを原因部のみ阻害する薬を2週間毎に注射することで皮膚の炎症やかゆみを抑制する治療法です。通常の治療では改善が見られない場合に検討されます。高価ですが高額医療制度をご利用いただけるようになりました。
また自己注射の導入により通院回数も2-3ヶ月毎に減らせます。
治療の詳細、適応についてはご希望の際に改めてご説明させて頂きます。

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